合板DLとは
1.合板(ごうはん)とDL(ディーエル)材
合板は「910 mm(三尺)× 1820mm(六尺)」の長方形で,厚さが均一な規格化された材料です。一般的には「サブロク板」と呼ばれています。我が国で使用されている最も代表的な木質材料の「規格材(ディメンジョンランバー:Dimension Lumber)」です。
DL材は合板の厚さを 1(いち)と定め,幅を合板長手方向で 1 として,材料取りを行ったと想定します。この長手方向の短冊状に縦挽きした材料を 1×1(ワンバイワン)と呼ぶ規格材とします。
このようにして,合板の厚さ 1 に対して幅 2 とすると,この材料を 1× 2(ワンバイツー)と呼び,合板の幅nを 1~10 に材料取りした規格材のことを 1 × n材と呼びます。他にも,1 × n材と 1 ×n材の規格材をL 型やT 型に組み合わせて接着した材料をT型材(T 材)やL型材(L 材)と呼び,DL 材の種類に含めます。
2.モジュール木工とは
モジュールは建築で設計上の基準となる単位寸法のことです。日本では「尺(しゃく)」や「間(けん)」を単位寸法として使用しますが,これもモジュールのひとつです。我が国の建築工法では,住宅を建てるときのモジュールを 910 mm(三尺)× 1820 mm(六尺)としているため,多くの建築物が尺モジュールをベースに建てられています。本書では,「モジュール」のような単位寸法の考え方を利用して,初心者や学校現場でも気軽に合板DL 材のような規格材を工夫して組み合わせながら,ラックやいす,机などを作ることを「モジュール木工」と呼びます。
モジュール木工では,一定の寸法形状や長さをもつ規格材を使用して,ラックやいす,机などが住まいの間取りにどのように合うかを考えて設計するため,住空間などにおけるゾーニング(住まいの全体の構成を考えて空間をデザインすること)が行いやすく,家具の機能設計がしやすい利点を持っています。また,使用する部材が規格された寸法のため,丈夫な材料・構造をもつラックやいす,机などを設計する上で,材料力学や構造力学における考え方を利用した設計がしやすい利点も持っています。さらに,規格された部材を組み合わせて接合するため,部材同士の接合を考えやすく,釘接合(釘+接着剤)や接着剤のみの接合を容易に行うことができる利点もあります。
その他にも,規格材と相似形をした模型材を用いることによって,作りたいラックやいす,机のプロトタイプ(試作品)を作って設計に役立てることもできます。また,DL材の規格を登録したCADソフトを利用すれば,コンピュータを用いて,簡単にDL材を用いた設計・製図を行うことができます。
[出典:木工革命 ー合板DL・モジュール木工ー 海青社]
なぜ?変えねばならないか
従来の「木材・集成材の一枚板」教材を、合板DL・モジュール木工教材に なぜ? 変えねばならないのか
1.技術教育における木材加工教育の変化
技術革新時代において、技術教育の「材料と加工の技術」は様々な材料の中から製品使用時に適した特性の材料選択が求められるようになりました。そして、現代生活での伝統的な木材加工学習における技能習得の必要性の低下があります。しかし、日本の木の文化立国や世界的なSDGsの新時代、地球環境時代において、木材加工教育は新たな立場での存在意義が誕生してきています。
2.木材や集成材の教材はなぜ?ふさわしくないのか 。なぜ?合板が良いのか?
現代の技術教育では、木材材料は金属、プラスチックのように人類が工夫創造した材料として学ぶことが必要になりました。金属(鉄)、プラスチックは原材料の化石資源の鉄鉱石、原油から工夫創造の製鉄技術や製油技術の開発により新たに誕生した材料です。
木材材料では集成材が工夫創造の木質材料の一つとして使用されていました。しかし、集成材は木材そのものを原材料とし、従来の製材加工技術に改善を加えた材料です。ところが、合板は単板切削での斬新な製材加工技術の工夫創造により、歩留り向上や単板の直交接着による強度や膨潤異方性解消の工夫創造が顕著な木質材料です。そこで、この合板を材料として、「材料と加工の技術」に相応しい教材を開発しました。
3.合板DL ・ モジュールが技術教育に相応しい点は何か?
合板の板厚12㎜を1(ワン)として板幅を整数倍の2(ツー)、3(スリー)・・・とした短冊状に材料取りした1×1(ワンバイワン)、1×2、1×3・・・のような寸法規格が、製品の呼び名と材料寸法が一致する規格材Dimension Lumberとなり、容易に部品交換も可能な構成部品(module)となります。また、DL材は断面形状により材料曲げ強度が確定でき、強度を考えた設計学習の教材となります。
4.実用品の製作に拡張性があり、部品接合が容易で接合強度が高い
中学校技術教育での合板DL教材による学習内容は、学校教育のみならず実生活にも容易に生かせる拡張性のある学習内容です。合板DL教材で学んだ学習成果は、その設計を拡大し、大きな材料で大型木工作品(例えば、机やいす等)を製作でき実用家具として、実生活に生かせる技術です。また、caDIY3D(キャディースリーディー)と合板DL材の規格材は相性がよく、容易にCAD操作に適応できます。
5.「 合板DL普及協会 」( https://www.gia.gouhan-dl-fukyu-kyoukai.com/)の存在
この教材の普及活動の拠点が一般社団法人「合板DL普及協会」です。本協会は木材加工教育や技術教育を専門とする大学教授と合板DL授業実践者の中学校教員らの協力を得て、協会のHPで先生方に授業実践に役立つ有益な情報提供をします。また、全国で先生方への合板DL教材普及のための教員研修会を開催いたします。